最新の記事

隔週月曜更新です

メインビジュアル

Share!

Facebook Twitter はてなブックマーク

2020年05月01日

ミュージシャンの「いま」を知りたい〜Vol.1 国府弘子さん(ジャズ・ピアニスト)〜

「ミュージシャンたちって、今、どうしているのだろうか」
いち演奏者、そして音楽ファンとして、とても気になる。
気になるなら聞いてみればいい、と思いたったが吉日。

初回にして、とんでもない方にお話を聞くことができた。

この記事を書いた人

プロフィール写真

Facilitator / Musician / Writer

高田ゆうぞう

YUZO TAKATA

Facebook

1992年鳥取県生まれ。英語を教えたり、オーケストラでギターを弾いたりしている。サウナと麻婆豆腐が好きなので、やたらと汗をかく。

そもそも、ミュージシャンって普段何してる?

 

いわゆる「コロナ禍」の現在、音楽に限らず様々な芸術が衰弱している。色々な公演の延期や中止の情報を、各種ニュースでたびたび耳にしているのではないだろうか。

 

かくいうわたしも、いち演奏者・音楽ファンとして、かなり寂しい思いをしている。自分のライブはおろか、スタジオでの練習すらしばらくやっていない。好きなことが制限されると、生命力が枯れていくような感じがする。

 

しかしながら、わたしは音楽では主たる収入を得ていない(お金をもらうこともあるが、ちょっとしたものだ)。なので、今回の件で生活が切迫しているかというと、正直そうではない。

 

また、そういえばミュージシャンが普段どうやって生計を立てているか、実はあまりよく知らない。ライブとかレコーディングとか、あとはなんだろう……。

 

ということで、様々な立場のミュージシャンならびに音楽に携わっている人に、普段の仕事や現在の状況について話を聞いてみたいと思う。

 

題して、

 

「ミュージシャンの『いま』を知りたい」

 

である。うん、サイトの趣旨にも合ってるな。

 

さて、初回だが、とんでもない方にお話を聞くことができた。

 

国府弘子(こくぶひろこ ピアニスト・作曲家・編曲家) 国立音楽大学ピアノ科を卒業後、単身渡米。帰国後1987年デビュー。自己のトリオやソロコンサート、またオーケストラとの競演まで幅広い活動で人気の “ピアノ界のスーパーレディ”。川崎市市民文化大使、入間市文化創造施設アドバイザー、平成音楽大学・尚美学園大学客員教授。2019年秋に川崎市文化賞を受賞。音色の贅を極めたソロアルバム「ピアノ一丁!」岩崎宏美×国府弘子のデュオ作品「ピアノ・ソングス」に続き、2020年2月リリースの24枚目の新作「ピアノ・パーティ」は結成22年の鉄壁のトリオでの〝あうんの呼吸“を堪能できる。公式サイト

 

 

初回にして、とんでもないことになってしまった。

 

日本でジャズを志す人なら知らない人はいない、と言っても過言ではないだろう。

学生ジャズバンドの一大祭典「ヤマノビッグバンドジャズコンテスト」でも長年司会を務めておられる、文字通りスーパーレディである。

 

わたしと国府さんとの交流(?)は、その「ヤマノ」に出場した際、わたしが緊張のあまり舞台袖で国府さんに話しかけたとことから端を発す(おいおい)。

 

その後、なんとFacebookで繋がり、連絡を取ったりライブにお伺いしたり……と、「ジャズ界の大先輩と小後輩」「グレートミュージシャンとただのいちファン」「スーパーレディとノーマルボーイ」のような関係で現在に至る。

 

「さすがにインタビューとかはお受けしてくださらないだろうな、まあダメ元で……」とお尋ねしたら、まさかのまさか、お引き受けしてくださった。この興奮と感動はなかなか伝わらないと思うが、なんというか、「美味しんぼ」の海原雄山氏にお願いして直々に料理を教えてもらうような、そんなスゴさである。うーん、伝わらない。

 

とまあ、そういう関係性なので、以下のインタビューにおいてわたしの「あいづち」が、非常に探り探りなものになっていることをご容赦いただきたい。

 

国府さんの「日常」

 

今回はインタビューご協力ありがとうございます。いまもメモをとる手が震えています(笑) 早速ですが、普段はミュージシャンとしてどんなことをして過ごしていましたか。

 

依頼のあったホールやイベント会場、学校、ライブハウスなどに出向き(海外含む)、演奏会をするのが日常です。遠方ですと、重たいスーツケースとともにあちこち移動して、何日も演奏旅行を続けることも多いです。

 

形態としては、ソロピアノ(自分のみ)であったり、バンドメンバーと一緒だったり、歌手と二人だったり、時にはオーケストラの何十人という方々と一緒のことも。ピアニストという稼業は、いろいろな立場で退屈知らずです。

 

確かに、演奏形態が多岐に渡るのもピアノという楽器の強みですね。

 

あとは大学の客員教授としての特別講義や、CDなど自分の作品をリリースした時の雑誌インタビューや番組出演など。自宅にいる時も、ライブの準備でメンバーに渡す譜面を書いたり、弾けないことを弾けるようにするためピアノの練習をしたりしています。

 

疲労をためると体調を崩すので、時間を作って整体やストレッチのプロに身体のケアをしてもらったり、爪のケア、衣装のクリーニング、譜面の整理など……家にいるとやることはエンドレスなので、まとまった休みがあると一週間ぐらいバカンスに飛んで行くのが一番の気分転換。

 

ともかくこの33年、こんな感じでした。

 

33年!!! まさに「スーパーレディ」ですね。

 

 

 

 

「コロナ禍」の現在は

 

そして「コロナ禍」と言われる今現在、お仕事はどういう状態でしょうか。

 

この職種のご多分にもれず、3 月以降の全ての演奏会やイベント出演は中止、あるいは延期です。先が見えない中でのスケジューリングで主催者はご苦労されています。ともかく、出向く仕事はご承知のとおり100%キャンセル。ただし、会社収入には結びつかずとも電話やオンライン、原稿執筆等での番組出演やインタビュー応対などは自宅でやっています。このインタビューもその一つですね。

 

イベントの主催者としては、会場のキャンセル料など色々考慮すると、早めに動かざるを得ないですものね。

 

ちなみに5 月上旬のゴールデンウィークの時期は、金沢の「楽都音楽祭」で一週間毎日違うコンサートに出演予定でした。親子向けのソロコンサートあり、大先輩・山下洋輔さんとのピアノデュオコンサートあり、ベトナム交響楽団との映画音楽共演あり……。

 

そのすべての中止は、もう「残念」の一言です。ちなみにその中で、アンサンブル金沢との共演のために依頼された「オーケストラとピアノのためのビートルズメドレー」20 分というスコアはこの状況下でもしっかり書き上げ、秋の延期開催を信じて楽しみにしています。

 

※[外部リンク]いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2020

 

延期されたイベントが無事開催されることを願います。他にも、このタイミングだからこそやれたことはありますか。

 

4 月は何をしていたかというと、ちょうど依頼のあった尺八とピアノの作品の作曲に取り組んだあと、ためこんだ事務仕事をしたり、結成 22 年の「あうん」のトリオ(※)との遠隔セッション演奏にも挑戦してみたり。

 

(※)ピアノ国府弘子、ベース八尋洋一、ドラム岩瀬立飛のトリオ。ジャズの少人数編成での演奏は、あまりメンバーを固定しないことが多いので、22年というのは驚異的。

 

左から八尋さん、国府さん、岩瀬さん

 

 

それから、動画編集なんて私にはとてもムリ……と思いつつも、助けてもらって入門してみると、なんだか面白そう。あの星野源さんの「#うちで踊ろう」のコラボフリーのおかげで、初挑戦しました。

 

 

You Tubeの国府弘子公式チャンネル、ぜひ登録してください。今後いろいろな演奏動画をお届けできると思います。

 

大ベテランにも関わらず、新しいことにも挑戦されていて、頭が上がりません……!

 

今思うこと

 

そうそう、音楽家として以前の「暮らしの基本」も思いきりエンジョイしています。いつもは仕事優先で完全に手抜きだった料理も時間があると楽しいし、冷凍庫の整理もできるし。それからベランダのお花もちゃんと面倒を見てあげると綺麗に咲いてくれます。あれこれ不調があった身体も、毎日のプチ筋トレでいい感じ。

 

外に出向く仕事がない中でも、気づくことは多々あるのですね。他にも、今回の件を通してなにか気づかれたことはありますか。

 

まず医療関係者のご苦労を讃え感謝するとともに、飲食業や旅行会社、航空会社、他いろいろな職種の方がみんな大変な苦労をしていると思います。そして我々芸術家も然り。こんなにあっさりと「収入がなくなる」現実にまず愕然としつつ、そこをどう乗り越えるか。自分だけの問題ではないので、なるべく客観的になって考えてみたいところです。

 

「自分だけの問題ではない」とは、具体的にどのようなことですか。

 

わたしの場合は、小さな有限会社(自身の個人事務所)を経営しているので、長年一緒に「国府弘子」を育ててきた大事な相棒であるマネジャーさんには、なんとしてでも給料を払い続ける決意でいます。

 

他にも、あの顔この顔、感謝いっぱいの仲間たちの顔が、会えないからこそ浮かびます。長年一緒に活動し、私の曲を理解し愛してくれてきたバンドメンバーや音響スタッフ、ピアノ調律師さん、各地のイベント制作者、半人前の頃からお世話になったライブハウスのママさん……。

 

わたしは決して大スターではありませんが、一つのコンサートを作るのにどれだけたくさんの人が関わっているか。その人たちの顔を今、毎日思い出しています。その一人一人がこれからどう生き延びてくれるか、どうか生活できますように、と考えると、自分もその一人としてとことん前向きでなけれならない、自分の「プロフェッショナル」な場を取り戻す努力をしなければと思います。

 

ひとつの音楽には、見えないところで数多くの人が関わっていますものね。

 

実は、今まで忙しく演奏活動をしながらも、心のどこかで「じっくり練習や準備、いわゆるインプットをしないといけないな……いつもアワアワ出かけて、空っぽになってしまってはいけないな」と思っていたので、個人的にはこの自粛生活、むしろありがたくもあり、決して苦ではありません。これ以上感染を増やさないために、それがまず自分でできる「必要なこと」なのは確かですし。

 

……と、前向きな気持ちでいつつ、我々演奏家の本当の苦労は、実はこの自粛時期が終わったあとだ、と予想しています。少なくとも大きな音楽会には、予想を超える予算がかかるのです。各地が経済的にあえぐことを思えば、文化芸術にかける予算が今までのようにいかない時期が長く続くでしょう。

 

ひとたびそういった「土壌」が弱ってしまうと、再び文化芸術が育つのには時間がかかるような気がします。

 

でも、例えそうであっても、人は衣食住だけでなく「心の栄養」が必要な生き物。そしてその大きな一つが「音楽を生で聴く感動」です。それを信じて「自分が人のために役に立てること」「自分自身が生活していくこと」 両方これからじっくり考えていこうと思っています。

 

政府や東京都には、世界中がこうなった以上、大規模でハデなオリンピックをもはや目指す必要はなく(というか無理でしょう)、虫の息の国民に敏速なる補償金をまず届けていただき(これはとにかく一回では意味がなく、持続的に)、来夏でも数年後でも、アスリート主体の極小規模のシンプルなオリンピックをやってください、と言いたいです。その質素さに、きっと我々と世界は感動し、復活の勇気をいただくでしょうね。

 

心強いお言葉、ありがとうございます。

 

新作『ピアノ・パーティ』について

 

さて、実は今回取材させていただこうと思ったのは、国府さんの新作を聴いたのがきっかけです。そのお話もお聞かせください。

 

24 枚目の新作 アルバム「ピアノ・パーティ」が 2 月にリリースされました。各種通販サイトでご購入いただけます。Apple Musicなどのサブスクリプション・サービスでも聴けます。

 

※購入はこちらから

・[Amazon]ピアノ・パーティ [CD]

・[楽天]ピアノ・パーティ [ 国府弘子 ]

JVC

タワーレコード

ハイレゾでの配信(音にこだわる方はこちら!)

 

人生のいろいろな万感の場面を〝パーティ〟に見立てて、想いを込めて作曲編曲しています。結婚パーティの華やぎもあれば、二人きりの結婚記念日を祝う曲も。大ヒットJ-Pop曲のジャジーなバージョンも、宇宙デートも……ご自宅で「ピアノ・パーティ」をぜひ楽しんでください。自慢の「国府弘子スペシャルトリオ」のあうんの呼吸を自慢した 1 枚です。プレゼントにもとてもいい、とこの自粛時期に友人たちがまとめ買いしてくれて感涙してます。

 

その中でも新曲〝リボーン〟は、このコロナ騒ぎが終息したあとの、皆さんへの激励の一曲かな。

 

 

国府弘子スペシャルトリオ

 

新作、ひとりで「うおお」とか「いえい」とか言いながら聴いています。特に“リボーン”、テーマ入り後の「ポロロン」で、いつも息を飲んでしまいます。他にも、一曲を通しての豊かな展開、華麗なフレージングとメロウなグルーヴ、そして「演奏すること」それ自体の喜び……!(取り乱す)

 

……すみません。最後に、読者の皆さまへメッセージをお願いします。

 

この2020 年春が、もう過去なのか、まだ続いているのかわかりませんが……ともかく、例えこんなイヤなことであれ、世界中が一つになって見えない敵に立ち向かったこの経験、いつか何かの形で自分の強さに活かしちゃいましょう。語学への興味、旅の構想、人を想うこと、音楽を楽しむこと……。

 

「災い転じて、福となす!」

 

数年後、コンサート会場で笑ってお会いできますよう。

 

ありがとうございました!

 

おわりに

 

どうだ見たか。これがスーパーレディだ(お前は誰だ)。

 

ひとりのミュージシャンが活動するその舞台裏では、ほんとうに沢山の人が動いている。その感謝を常に忘れずにいるからこそ、国府さんは何十年もエネルギッシュでいつづけることができるのだ。

 

わたしもせめて「ノーマルボーイ」ではなく「グッドボーイ」ぐらいにはなれるよう、感謝を忘れずエネルギッシュにやっていこう。そんな元気をいただいた。

 

「ミュージシャンの『今』を知りたい」、今後も続きます。

次回は「フリーランス」で音楽活動をされている方にお話を伺います。お楽しみに。

 

※国府さんの最新情報はこちらから

 

国府弘子オフィシャルページ

ブログ

Twitter

Facebook

Instagram